【まず「病気」と受け入れて】

自分の意志では賭け事をやめることができないギャンブル依存症からの回復を目指す自助組織「GA（ギャンブラーズ・アノニマス）富山グループ」（富山市）が今月で活動開始から二周年を迎えた。ギャンブル依存症に陥っている人は国内で百万人以上とも推定され、莫大な借金を抱えて犯罪に走るケースも。代表の男性（54）は「深刻な状態になる前に対処を」と訴える。

GAは、依存症の当事者が悩みを分かち合うことでギャンブルの衝動を抑える活動をする。全国に百二十以上のグループがあり、北陸三県では各県に一つずつ。神奈川県などには女性だけの組織もある。

賭け事をやめられず道を誤る例は多い。富山県内では昨年十一月、勤め先から一千万円を着服した射水市の金融機関の管理職が解雇された。本人は取材に「競輪にのめり込み周りが見えなくなっていた」と答えた。負けを取り返そうと消費者金融から借金を重ねたという。

依存症の人数は国内では明確な調査結果はないが、米国の精神医学会による推計では、成人百人中に数人といった割合。横浜市の治療施設「ステラ・ポラリス」の壁田英一代表は「表面化しづらいが、日本でも百万人単位でいるのではないか」と推測する。

本人はなかなか依存症だと自覚せず、問題を繰り返してから気づくことが多い。昨年秋からGA富山に参加する県西部の男性（40）は、大学時代にパチンコに没頭。昔いじめに遭ってから人付き合いが少なく、パチンコ店が「居場所」となった。就職後、消費者金融を頼り、家族に返済を肩代わりさせた。

それでも衝動は消えずに再び借金し、ついには会社の金を着服。職を失ったある日、路上で「まともな人間に戻れなくなる」との思いに襲われた。相談した富山市の「県心の健康センター」を通じ、GAを知った。

ミーティングは週一回、富山市星井町の富山聖マリア教会であり、ギャンブルをやめたいと願う人なら誰でも参加できる。毎回、十人ほどで机を囲み、「ギャンブルに対し、どのように意志がくじけたか」「ギャンブルがきっかけで、他の人をどう傷つけたか」などを一人ずつ話し、耳を傾け合う。

「正直に語るうちに身が軽くなった」と男性。賭け事をしたい気持ちはまだ残るが、「今日一日を無事に過ごす。それを繰り返すしかない」。

GA富山代表の男性も、かつて依存症に苦しんだ一人だ。「本心からやめたいと願う者なら、回復は期待できる。病気だとを受け入れることが第一歩」と強調する。

◇ギャンブラーズ・アノニマス◇　ギャンブル依存症の当事者でつくる自助グループ。アノニマスは「匿名」の意味。ミーティングで正直な思いを語れるように、参加者同士は本名を明かさずニックネームで呼び合う。GAによる依存症の判断基準では「負けてもすぐ取り返そうとする」「悩みから逃れようと賭け事をする」「借金を繰り返す」など、20項目のうち7つ当てはまれば「可能性が極めて高い」と。GA富山の問い合わせは県心の健康センター＝電076（428）1511＝へ。

引用：ギャンブル依存 克服できる 富山の自助組織 活動2周年
（2012年2月16日 北陸中日新聞）