【全国で急増 30日相談会】

もうけ話や芸能人とのメール交換を持ちかけてインターネットの専用サイトに誘い込み、高額なメール利用料を請求する「サクラサイト商法」の被害相談が全国で急増している。国民生活センターが把握した昨年度の被害額は38億円にのぼり、1人で数千万円を支払わされたケースもあるという。各地の弁護士会は今月30日に「全国一斉110番」を実施する予定で、東海地方でも愛知、岐阜両県の弁護士会が無料で電話相談を受け付ける。

「2億円を差し上げます」。昨年5月、愛知県内に住む60歳代の会社員男性にメールが届いた。指定されたメール交換サイトに登録すると、「2000万円をあげます」「占いをします」「交際しませんか」などのメールが続々と届き出し、女性や占い師などを名乗る数十人とメール交換を続けた。

男性は、メールのやりとりに利用料が必要なことは知っていた。しかし、昨年12月、通帳を記帳すると利用料などとして1600万円が引き落とされていたことがわかり、だまされたことに気づいたという。男性がこの間に送信したメールは約1600通に上ったという。

サクラサイト商法はまず、サイト運営業者が多額の金の提供や芸能人からの悩み相談、異性とのメール交換などを持ちかけるメールを不特定多数に送信。受信した人が指定されたサイトに登録すると、「社長」や「異性」などを装ったサクラからメールが届き出し、やりとりが繰り返されるようになる。中には「アラブの富豪」「人気アイドルグループのリーダー」を名乗るメールもあるという。

数回程度の送受信は無料だが、一定回数を超えると「ポイント料」と呼ばれる手数料が必要になる。1ポイントは数十円～数百円だが、やりとりを重ねると「重大なメール」「チャンスメール」などとして１回あたり数百～数千ポイントが必要になることもあり、結果的に高額な請求につながる仕組みだ。

国民生活センターによると、サクラサイトなど「利益誘引型」と呼ばれるサイトを巡る昨年度の相談件数は約6000件、被害総額は38億円で、このうち愛知県に寄せられたのは213件、9400万円に上った。このため、同センターは昨年12月、2日間にわたり電話相談を実施。相談があった63件の平均被害額は420万円で、中には8000万円を支払ったケースもあった。

サクラサイトを巡っては、各地でサイト運営業者を相手取った訴訟が起きているほか、業者やサクラが詐欺容疑で逮捕されるケースもある。愛知県弁護士会の弁護団事務局長を務める鵜飼雅成弁護士は「悪質な業者はあの手この手で心の隙間を狙ってくる。怪しいメールは相手にせず、不審に感じたら消費生活センターや弁護士に相談してほしい」と話している。

「30日に実施される愛知県弁護士会の無料相談の受付時間は午前10時～午後4時で、専用電話は052・223・2355。岐阜県弁護士会は午前10時～午後3時で、058・265・2850。三重弁護士会は059・228・2232で随時受け付ける。」

＜サクラサイト商法＞
国民生活センターによると、メールの相手となるサクラは、異性、タレント、社長、弁護士、占い師など様々な役割を演じている。異性がほとんどだった以前の出会い系サイトと比べてサクラの種類が多く、利用者の好奇心や親切心などをあおって利用料を発生させる。

引用：「アイドル」にメール誘われ「利用料」「サクラサイト」被害38億円
（2012年5月20日 読売新聞 地方版）